「分かりやすい出版物」の制作

 今回は、弊社がねらいとする「分かりやすい出版物」について話をさせてください。

 近年、新聞やテレビ、書籍などを通じて私たちに伝わってくる情報は、専門的な知識無しには理解し得ないものが多数あります。政治の話、経済の話、医療の話、年金の話……日々難しい専門用語が飛び交い、私たちの頭を悩ませます。
 もちろん、その分野について専門的に勉強し、知識を深めれば、それら難解な話を理解することは可能です。でも、「勉強するための分かりやすい出版物が無い」という経験をした人は、意外と多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 では、こうした書籍が「難しい」「分かりにくい」と感じるのは何故でしょうか。第一に、執筆した人自身が高い専門性を有するため、「書き手」と「読み手」の間に知識水準の隔離が起きているケースが考えられます。「書き手」が日常的に利用している言葉も、その分野に疎い「読み手」にとっては初耳だったりすることが、珍しくありません。例えば、パソコンが苦手な人は、難解な専門用語に悩まされた経験がおありだと思います。
 第二に、その文章自体が乱雑で、意味的に分かりにくくなっているケースがあります。文章というものは、正しい修飾語、正しい接続詞、正しい助詞、が使われていなければ、とたんに読み手を混乱させてしまいます。たとえ、丁寧に綴っていても、接続詞の使い方を一つ間違っただけで意味不明と化してしまう、それが文章というものなのです。最近の出版物、特に書くことに慣れていない人が執筆した書籍の中には、こうした「乱雑な日本語」を見ることが多々あります。
 文章を読んでも意味がよく分からない時、読み手の中には、自らの読解力の無さを嘆く人もいます。でも、私から言わせてもらえば、むしろ文章自体に非がある場合の方が多いのです。

 近年は社会が複雑化し、私たちの周りには分からない事柄が溢れ返っています。例えば、環境の話一つとっても、ここ10年ほどのうちに「環境ホルモン」「ISO14001S」「環境アセスメント」等、実に様々な用語が、私たちの身近なところで使われるようになりました。そして、こうした言葉の中には、私たちが生きていく上で、知っておいた方が良い、あるいは知っておかねばならないものも多数あります。終身雇用が崩れつつある中、税金や年金のことを会社任せにするわけにいきません。また、様々な消費者不安が蔓延する中、化学物質や食品添加物に関する必要最低限の知識が、何よりも安全な生活を保障してくれます。さらには、マスコミが煽る風潮に流されることなく、多くの人々が問題の本質を正しく見抜いてこそ、住みよい社会は築かれていくのです。
 つまり、社会が複雑化すれば複雑化したなりに、生活者であり消費者である私たちは、その社会をより良く生きていくための「知識」と「知恵」を身につけなければならないのです。

 弊社が手がける出版物の基本的視点は、「分かりやすい文章」で「理解できる出版物」を作ることです。一人でも多くの人が、そうした出版物を通じ、知識と知恵を深め、自らの暮らしを豊かにしていって欲しいと願っております。

〔2003.5.1 弊社代表・佐藤明彦〕