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もう11年も前の話だが、私はイスラエルに旅行へ行ったことがある。目的は、いわゆる観光。「イスラエルに観光」なんて言うと、妙な違和感を覚える方もいるだろうが、「歴史探訪」や「社会勉強」というほど明確な目的意識を持った旅ではなかったように思う。とにもかくにも、海外生まれの癖に、その歳まで海外旅行をしたことが無かった私にとって、刺激が多く有意義な旅行だったことに違いはない。
写真は、エルサレムのオールドシティをバックに撮ったもの。テロが頻発するエルサレムという土地に似つかない、何ともお気楽感がにじみ出た写真だが、当時中東の政情は比較的安定し、海外からの観光客も多かった。この約半年後、ラビン首相(当時)が殺害され、イスラエルの和平は一気に暗礁に乗り上げてしまうのだが、私が旅行した当時は、バスにも平気で乗れたし、街を一人で歩いていても何ら危うさを感じることが無かった。
この写真を撮ってくださったのは、コーディネーターの柿内ルツさん。車でエルサレムの街からマサダの城塞、クムランの遺跡などを案内くださったが、イスラエルの現況から旧約聖書に遡る歴史に至るまで、奥の深い話を分かりやすく噛み砕いて伝えてくだったことを、今でもよく覚えている。
世間とは狭いもので、先日、偶然にも柿内さんと都内のホテルで再会した。弊社が事務局を置く「子供に伝えるクラシック」のプロジェクト(詳しいことはいずれご説明します)の旗揚げコンサートに、招待客として参加されていたのである。当日、私は受付をしていたのだが、署名の「柿内ルツ」という名を見て驚き、思わず声をかけてしまった。無論、年に何100人という人をコーディネートしている彼女は私を覚えていなかったが、当時の今のイスラエルについて、しばし話をすることができた。彼女は、今も変わらずコーディネーターとして活動し、年に数回、講演などで日本に帰国しているという。
世間が狭いのか、同じような価値基準を持っている人間同士は、どこかで繋がっているのか。国内の方ならまだしも、海外在住の方とこうした形で再会できるというのは、とても不思議なことのように思う。