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ここ数日、座談会やインタビューの原稿執筆に忙殺されている。基本的に、録音された音声を聴きながらその内容をまとめていく作業なので、「原稿執筆」とは言えないかも知れないが、それに勝るとも劣らないハードな仕事である。何しろ、話し言葉はそのまま文字に起こすと、難解極まりない文章と化してしまうのだ。
不思議なもので、インタビューや座談会の場に同席せず、音声データだけ提供されると、何を話しているのか理解できない部分が多々出てくる。逆に同席して話を聞いた上でテープを聴くと、ごもごもと不明瞭に話している部分や早口の部分も、それとなく意味を理解することができる。以前、録画VTRのテープ起こしという仕事をやったことがあるが、単なる音声データよりも圧倒的に仕事はやりやすかった。映像に話者の口元が映っているわけではなかったが、きっと身振り手振りから推測できる部分があったからなのだろう。
私たちは会話の中で、声という音情報にとどまらない無数の情報を、その空間から読み取っているに違いない。それは、相手の口の動きであり、目の動きであり、表情であり、身振り手振りであるのだと思う。あるいは会話する場所や時間、その日の天気や気温、その人のパーソナリティ・境遇など、予めインプットされた情報も、会話を聴き取る上での有効に活用されているのかも知れない。
蛇足になるが、私は大学時代、認知心理学を研究していたことがある。会話の聴き取りや図形の視認識など人間の情報処理システムをモデル化する、という研究である。だから、こうしたウンチクが大好きである。