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私が初めて東京の街を歩いたのは、中学1年生のときであった。当時、東京の大学に通う兄のアパートを母と共に訪れたのだが、その途中、新宿の高層ビル街を歩いた。当時、田舎育ちであまり高い建物を見たことが無かった私は、その高さに圧倒されてクラクラしてしまい、その後2時間ほどで頭痛がし始め、兄の家で寝込んでしまった。田舎者だなぁと、自らを情けなく思ったことを今でもよく覚えている。
あれから20年が経った今、さすがに高層ビルを見て頭痛を起こすようなことはなくなった。だが、人によっては、建ち並ぶ高層ビル等の圧迫感で、身体に変調を来たす人もいるという。中学生時代の苦い経験をもつ私にとって、そうした人たちの気持ちは嫌というほど分かる。
国立市の大学通りの景観を巡った一連の裁判で、最高裁の判決が出た。結果は住民側の敗訴。「建物の一部撤去」という画期的な判決が出た一判決から4年、最高裁が下した判断は「マンション建設が違法な利益侵害とは認めない」というものであった。
だが、今回の裁判では「景観利益」という概念が、初めて最高裁によって認められた。建築する側に配慮や思いやりを期待できないならば、この概念が住み良い街づくりの足がかりとなってくれることを期待するしかない。