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最後は、昨年の話題作「モンスター」。アメリカの犯罪史上に名を残す、アイリーン・ウォーノスという女性の姿を描いた、実話に基づく映画である。本作は、以前週刊誌でその概要を知ってから、観よう観ようと思いつつ、その機会を逸し続けてきた。今回、1年越しの思いが実現。何しろ人間の性(さが)や本質に迫る作品は、映画・小説を問わず大好きなのである。
彼女がなぜ、人を殺し続けたのか、いや殺し続けねばならなかったのか。その真実の姿をリアルに描いた本作は、主演のシャーリーズ・セロンが13キロの増量で過激な変身を遂げ、アカデミー主演女優賞を獲得するなど、ハリウッド界でも話題となった。脚色がないぶん、物語に抑揚や起承転結がないが、これはアイリーンという女性をリアルに描いた結果なのであろう。
詳しいストーリーは、実際に映画を観て欲しいが、人間がなぜそうなってしまうのか、人が人らしく生き、愛する者に優しさと愛を与えるために、人を傷つけ、ついには「殺し」までてしまうその姿には、遣る瀬無さだけが残った。言ってみれば、観る者に何ら「救い」を与えてくれない映画だが、そこにある「問い」は、日々生きる私たちにも濃く影を落としているように思う。
約1時間半と少々短めの映画。何とか泣かずに観終わったと思ったら、エンディングのタイトルロールで、ジャーニーの「Don't Stop Believin'」が流れてきた途端、堰を切ったように涙がこぼれてきた。どうやら私の涙腺は壊れているらしい…。