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今から1年くらい前の話だが、事務所のチャイムが鳴り、ドアを開けてみると一人のスーツ姿の男性が立っていた。年齢的には20代前半といったところであろうか。シワ一つない小奇麗なスーツを見る限り、ひょっとしたら大学を出たばかりの新卒社員かもしれない。「○○という会社の者ですけど」と、1枚の名刺を私に差し出してきた。
その会社は、私の知る限り、あまり評判のよろしくない、どちらかと言えば悪名高き、「先物取引」の企業であった。すぐに断ろうとしたものの、彼のまっすぐな視線に押され、部屋に通して30分あまり話を聞く羽目になった。いかにも「マニュアル通り」といった感じの退屈な説明を繰り返し、彼はわざとらしい笑顔と共に事務所を去った。
彼自身、本気でその商品を良かれと思って勧めているのか、はたまた自らに魔法をかけているのか。真意は定かではないが、彼の所作の一つひとつに、仕込まれた何かを感じ、憂鬱な気持ちになった。だが、一体誰が彼を責めることができるだろうか。一生懸命勉強し、いっぱしの大学に入り、人並みに就職活動をし、内定をもらった会社がたまたまそんな企業だったのかもしれない。
もちろん「先物取引」そのものを否定するわけではないが、彼自身が社会でその業界をどう認知されているのか、それすらも知らない可能性だってあろう。一生懸命に、前向きに生きて来た人間ほど、世の中の仕組みは見えづらいものなのかもしれない。
by ミツフィ :2007年04月24日 20:25
私は日本に居た頃は、この手の職業の人々を快く思っていませんでした。しかしオランダに来ると日本人向けの仕事が中々見つからず、大勢の人が意にそぐわない仕事に就いています。中には「これ騙してんじゃないの?」という仕事もちらほら。日本人が日本人観光客相手にいい加減な事を言って土産を売るのです。
私もお金に困ってその仕事をしたことあります。最初は罪悪感にさいなまれていましたが、繰り返すうちに自己催眠状態になり、相手を人と思わなくなり痛みを感じなくなるのです。でもそれは恐ろしいことです。
ナチに通ずるものがありますからね。
多分、その若い人も自己催眠状態なのかもしれません。及び就職難の為抜けられないのかもしれません。
ただ、彼は日本でもっと選択の余地があるのだから頑張ってほしいと個人的に思います。
そして佐藤さんは、小さくても自分の城を持ち、自分のポリシーを貫けるお仕事をしている。大人でも自己迷走の人が多い中、それは大変幸運なことだと思います。頑張ってください。今後も応援しています。
by satoh :2007年04月25日 22:07
ミツフィさん、久々にコメントくださりありがとうございます。
なるほど、私なんかこれまで比較的恵まれた道を歩んできた方で、きっとそうした商品を売ろうとする人の立場や人生観を十分に理解できていないのだろうなと思います。きっと、自分がそうした立場に追い込まれれば、「生きる」ための手段として、そうした行為に及ぶかもしれません。そして、自らの罪悪感を封印するために「自己催眠」をかけることでしょう。
一番怖いのは、「自己催眠」をかけることではなく、その行為を「悪いこと」だと理解すらせずに、言われた通りに遂行してしまうことだと思います。私の所に来た彼が、そんな人間でないと信じたいものです。
私なんか、「ポリシーを貫いている」なんて言っていただけるほどのもんじゃ全然ありませんけど、温かいコメントありがとうございます。遠く離れたオランダの方とつながっているというだけで、とても嬉しくなり、前向きに頑張ろうという気持ちになります。ミツフィさんも、がんばってくださいね。