髪を切る

先日、久しぶりに髪を切りにいった。
ふと前に髪を切りにいった日を思い出してみると、約半年振りであることに気がついた。自分でいうのもなんだが、前髪はあごの下まで伸び、無精ひげは生え散らかし、よれよれのTシャツにサンダル履きときたものだから、どこぞのバックパッカーと間違われてもおかしくない風体であった。うちの会社は、服装や髪型に関しては全くもって自由な社風であるため、佐藤からはとくに何も言われなかったのだが、さすがにこれではどうかと思う。いますぐインドあたりに自分探しの旅へ飛んでいきそうな勢いである。

マメに髪を切りに行かない理由は、面倒くさかったり、髪を切られている間の時間が苦手だったりと幾つかある。今回はそれに、「ここまで伸びたら何か切るのがもったいなく思えてきた」というしょーもない理由がプラスαとしてあった。漫画家のつげ義春が描いた「無能の人」という作品では、主人公が世の中に偏在するもの(例:河原の石や切った髪の毛)を売って生活できないかと苦悩する様子が描かれているが、わたしの髪もどうにかすればどうにかなるのではないのかという考えが頭をもたげてきたのである。

そこでわたしはまず、わたしの髪の特性について再考することにした。わたしの髪の毛は、硬くまっすぐである。どれくらい硬いかといえば、切った髪の毛がわたしの首に突き刺さるくらい硬い。これは色んな意味で痛い。なので却下。次に、わたしは人より毛髪の量が若干多い。一度髪を切れば、一束のエクステンションぐらいにはなりそうである。ただ最近少し気になるのは、シャンプー後に抜ける毛の量も少しずつ増加しているような気がすることだ。わたしの父はわたしと似て髪の量が多い。だが亡くなったわたしの祖父は見事にはげあがっていらした。そういえばこの前帰省したとき、親戚のおばさんから「体型がおじいさんに似ている」と言われた。隔世遺伝という言葉が気になる昨今である。

そしてわたしに髪を切りにいかせた決定打となったのが、母の何気ない一言だった。

「あ、ふかわだ。」

わたしは決してふかわりょうが嫌いではない。むしろ面白いと思う。
ただわたしの人生において彼の立ち位置を目指すのは、あまりにも酷だ。


                                                (澤田)

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